激動する社会の波におぼれずに、自分の頭で考え 行動しようじゃないの。 命令されるのなんか 大嫌い。「群れない、媚びない、とんでもない」の猫の精神でがんばっていきまっしょい。
 ブレイクの詩「虎 The Tyger」からのインスピレーション
2015年01月08日 (木) | 編集 |

ようやく1ヵ月半ぶりの半日休暇。
大浴場の大掃除の後、午後3時過ぎに猫の餌や衣料品を買いに熱海へ行った。
いろいろやりたいことがあるけど、時間がなくて買い物だけで終了。
ドドっと疲れが出て、腰や肩が痛い(>_<)

それはさておき、マドレーヌの味から幼い日の記憶が蘇った、プルーストの小説
『失われた時を求めて』ではないけれど(^_^;) 誰もがふと目や耳にしたものから
潜在的な記憶蘇らせることがあるはずだ。
先日海外テレビドラマについて少し書いてみたが、北欧ミステリーの他にはまっている
のが、米国テレビドラマ・シリーズの『メンタリスト』だ。
「スーパー!ドラマTV」で、シーズン5まで放送中(シーズン6は日本ではまだ未公開)。





FBIならぬCBI(カリフォルニア州捜査局)のコンサルタント
パトリック・ジェーンは、元・人気霊能占い師。
連続殺人犯レッド・ジョンに妻と娘を殺害され、CBIの捜査と並行して
レッド・ジョンの足跡を追い、彼と対決するのが主なストーリーだ。
レッド・ジョンの犯行現場には、被害者の血で描いた顔マークが残されている。
ジェーンの捜査方法はホームズや刑事コロンボばりの鋭い観察力や
人間心理を応用したもので、その思いもよらない突飛な行動や
イヤミな物言いが、たまらなく魅力的でクセになる(^_^;)
ま、同僚としては、こういうタイプはお断りだけど。

ジェーンを演じるサイモン・ベイカー主演の、若い頃のテレビドラマ
『堕ちた弁護士~ニック・フォーリン~』も、私のお気に入りの作品だ。




ま、なにしろ録画しておいたのを、夜中に寝ながら観るもんで、気がついたら番組が
終わってしまっていたというのが度々で、ストーリーも前半しか覚えていないことも
多い。そんな中、ある回で(どこだったか記憶がない)、CBI捜査チームの一人である
キンブル・チョウが車の中で詩の解説をするシーンがあって、その詩の作者が
英国の詩人であり画家であるウィリアム・ブレイクであることがわかったとたん、
プルーストの小説のように、忘れていた記憶がどどどどっと蘇ったのである(^^ゞ

そこで、寝てしまって見逃した前の回を探してみると、シーズン2の第23話
(最終話)「夜明けの赤い空」で、決定的なエピソードがあったことが判明。
どーもその後の話と、うまくつながらないはずだ(´>∀<`)ゝ






レッド・ジョンのコピーキャット(模倣犯)に捕まって
グルグル巻にされたジェーンのもとに
気味の悪いマスクをかぶった本物のレッド・ジョンが現れる。
コピーキャットどもを撃ち殺した後で、レッド・ジョンは
ジェーンの耳元で、ある詩のフレーズをささやく。
「虎よ 虎よ 明るく燃える…」



  

捜査チームの同僚たちに救出された後
今は空家になった元の家の中で
ジェーンは、レッド・ジョンがささやいた
ブレイクの詩を繰り返す。
「虎よ 虎よ 明るく燃える」
 



    

「暗い夜の森で」
「不死の手や目が作りし その恐ろしき造形」






部屋の壁には、かつてレッド・ジョンが残した顔マークが。



この他にも、シーズン3の第9話でも警官殺しの犯人が「虎よ 虎」と言い残したらしい
が、私の記憶にないので(^_^;) いずれチェックしよう。
あとは第16話「赤の女王」で、バートラム局長がブレイクの他の詩の一部を口にする
シーンがある。

  「小さな心が目覚める時 恐ろしい夜は明けるだろう」

これもブレイクの詩、『無垢の歌』の中の「子守歌(ゆりかごの歌)」だという解説がある。

   おお、ずるがしこいたくらみが
   眠る幼い心にしのびこむ!
   幼い心がめざめるとき 
   恐ろしい稲妻がはじける



ところが、実際のブレイクの「子守歌」はこんなかんじだ。

   かわいい夢よ、影をつくれ
   いとしいうちの坊やの頭の上に。
   快い流れのかわいい夢よ、
   幸ある静かな月の光に照らされて。
                 (『対訳 ブレイク詩集』 松島正一・編)

実は英国の作曲家ベンジャミン・ブリテンが、「ウィリアム・ブレイクの歌と格言 OP74」
という歌曲を作っていて、それがバートラム局長が口にした「小さな心が目覚める時」
なのではないかと、私は推測する。
こっちの方が、逆に本物のブレイクみたいなかんじだし…ね。
   









正直に言うと、私は「虎」の詩は10代の頃から知っていたが、作者のブレイクの
名前を知ったのは30代になってからだった(;^ω^)





アルフレッド・ベスターのSF『虎よ、虎よ!』
中学生以降、小説はSFかミステリーものしか読まなかったので
脳みその中身が偏ってしまったかもしれない( ´艸`)
その後、同人誌で主にSF小説を書いていた頃
私もこの主人公フォイルの姿からインスピレーションを受けて
顔に車の轍のような醜いタトゥーがある
「ワダチ」という名の女性サイボーグを登場させたことがあった。



この本の冒頭に、ブレイクの詩が記されている。

    虎よ! 虎よ! ぬばたまの
    夜の森に燦爛と燃え。
    そもいかなる不死の手 はたは眼の
    作りしや、汝がゆゆしき均斉を。
            ウィリアム・ブレイク

上のSFの舞台は、「ジョウント」というテレポーテーションが可能になった25世紀。
顔に虎の刺青をされたガリヴァー・フォイルの、宇宙をまたにかけた復讐譚である。

余談だが、フォイルの奥歯に加速装置のスイッチが埋め込まれてるという設定を
知ったときは、心底驚いた。大好きな『サイボーグ009』の加速装置とまったく
同じで、石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)の発想のルーツをのぞき見てしまった
思いがしたからだ。
ちなみに石ノ森の大好きなSF小説は、P・K・ディックの『高い城の男』である。

さらに余談だが、スティーブン・キングの作品にも『ジョウント』という短編があって
これはもちろん『虎よ、虎よ!』からインスパイアされた(というかパクリ)で、元々
キングはSF作家を目指していたわけなんだが、結局その才能はなかったんだなと
納得できる出来だった(^_^;)


遅くなったが、ここでブレイクの『虎』(松島正一・訳)を。
詩は訳者によってずいぶん雰囲気が変わるものではあるが。
原題は、『The Tyger』。
ブレイクは単語のスペルにもこだわり、TigerではなくTygerと記している。


           虎

   虎よ、虎よ、輝き燃える
   夜の森のなかで、
   いかなる不滅の手、あるいは眼が
   汝の恐ろしい均斉を形作り得たのか。

   いかなる遠い深海か大空で
   汝の眼の火は燃えていたのか。
   いかなる翼にのって彼は高く上がろうとしたのか、
   いかなる手でその火を捉えようとしたのか。

   いかなる肩、いかなる技が
   汝の心臓の筋を捩(ね)じり得たのか。
   そして汝の心臓が鼓動を始めたとき、
   いかなる恐ろしい手が、いかなる恐ろしい足が。

   いかなる鉄槌が、いかなる鎖が、
   いかなる溶鉱炉に汝の脳があったのか。
   いかなる鉄床が、いかなる恐ろしい把握が
   その致命的な恐怖を握り得たのか。

   星たちがその槍を投げ下ろし、
   その涙で天をぬらしたとき、
   彼はおのれの作品を見て微笑したか。
   子羊をつくった彼が汝をもつくったのか。

   虎よ、虎よ、輝き燃える
   夜の森のなかで、
   いかなる不滅の手、あるいは眼が
   汝の恐ろしい均斉をあえて形作ったのか。




      







ブレイクは生存中は詩人としての名声を得ることなく、彫版師として生涯を
過ごした。数々の版画や銅版画、水彩画の作品も残している。
彼の水彩画が最近また注目を浴びたのが、ハンニバル・レクター博士シリーズの映画
『レッド・ドラゴン』(原作はトマス・ハリスの小説)でだった。








映画館で買った絵葉書。
映画『嵐が丘』以来のレイフ・ファインズのファンなので
木更津の友人を誘って、千葉市の映画館で観た。
ううう、美しいレイフがレッド・ドラゴンこと
殺人鬼ダラハイド役だなんて( ;o;)






ダラハイドの背中の刺青のモデルになったのが
ブルックリン美術館所蔵のブレイクの水彩画
『巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女』



中野京子『怖い絵 2』の中にも、ブレイクのこの絵が取り上げられている。

【巨大な多頭のレッド・ドラゴンは悪魔的存在の化身であり、竜と人とが合体した
異形の怪物で、今しもコウモリのような不気味な翼を思うさま拡げ、横たわる美女を
威嚇している。(中略) 
悪夢のようなこの光景は、『ヨハネ黙示録』の一場面を描いたものだ。】
【これは、か弱い女性の怯えを楽しむ怪物の姿である。相手の震えを自らのエクスタシー
に取り込む異常者の姿である。無力感にうちひしがれた女性を我が身と感じれば、
これほど怖い絵はない。しかし怪物にやすやすと我が身を重ねることのできる者に
とっては…。】

中野氏によると、ブレイクは幼少時から異常な幻覚を見ることで知られ、予知能力で
他者の未来の出来事を的中させたこともあったという。

中野氏の解説で特に興味深かったのが、この部分だ。
【ブレイクは、『黙示録』の一場面に強烈な性的フラッシュを浴びせることで、未来の
モンスター、つまり現代のサイコパス、暴力的変質者たちの出現を予告したのだろうか。
彼らの終わりなき夜の凄まじい内面世界を、ブレイク自身もまた知悉していたのだろうか?】











メンタリストの「虎よ虎よ」からレッド・ドラゴンにまで話が逸脱してしまったが
ブレイクの詩と絵を介して、「レッド・ジョン」と「レッド・ドラゴン」の相似形的な関連性も
よりはっきり浮かび上がってきたように思う。
レッド・ジョンはレッド・ドラゴンと同様、無慈悲な怪物であり、サイコパスでもある。
同時に元霊能占い師であり(本人はインチキであると客観視しているが)、ある意味
サイキックでもあるジェーンは、幻視するブレイク自身ともいえるのではないだろうか。
彼ジェーンもレッド・ジョンと同じモンスターであり、サイコパス的要素も有していると
言えなくはない。

というのが、虎からインスピレーションを受けて龍へとたどり着いた、私の白昼夢である。




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