
2013年11月10日 (日) | 編集 |


ベリリウムを主成分にする鉱物が「緑柱石」(左の写真)で、透明で美しいものが宝石のエメラルドになる。この緑柱石だのベリリウムだのの名称を知ったのは、手塚治虫の『ブラック・ジャック』でだった。
さびれた港町に立ち寄ったブラック・ジャックはピノコにそっくりな少女ロミと出会うが、ロミは「本田特殊合金精練ベリリウム工場」が垂れ流すベリリウムの毒によって肺を冒されており、B・Jの治療にもかかわらず息を引き取る。
初出の雑誌で読んだときはタイトルが「緑柱石」で、当時は緑柱石とベリリウムが結びつかず、なぜ緑柱石というタイトルなのか不思議に思っていた。その後単行本になった時は、タイトルが「ふたりのピノコ」に変更されていて、内容も多少加筆されていた。
こうした改変は手塚マンガでは珍しくないが、公害工場の名前もギャグっぽいものに変わり、最初の「緑柱石」が持っていた謎めいた不気味さや怒りの感情まで希薄になってしまった点は残念というしかない。

放射性元素のポロニウムとは直接の関連性はないが、エメラルドの色素成分であるベリリウムはその美しさの中に妖しい魔性を秘めていて、ポロニウムと同様、いつまでも記憶に刻まれる名前なのである。
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