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激動する社会の波におぼれずに、自分の頭で考え 行動しようじゃないの。 命令されるのなんか 大嫌い。「群れない、媚びない、とんでもない」の猫の精神でがんばっていきまっしょい。
 犬や猫も戦争の犠牲になった
2008年08月15日 (金) | 編集 |
■正午、遅いチェックアウトの若い団体の集合写真を玄関先で撮ってあげていると、
近くの防災無線のスピーカーから大音量でサイレンが鳴り出した。
20歳前後の若者たちは怪訝そうな表情で互いに顔を見合わせた。

今日は63回目の終戦記念日。
かつて日本とアメリカが戦ったことも、いや戦争があったことすら知らない
若い世代が増えてきているという。
つい先日の北京オリンピック開幕日にもグルジアが突如南オセチアに侵攻し
あわや米ロの衝突になりかかって、全世界がヒヤリとした。



■戦争や紛争は計りきれないほどの大きな犠牲を伴う。
そして犠牲になるのは人間だけではない。
ペットとして飼われている犬や猫たちも、先の大戦で多くの命を失ったのだ。

終戦記念日にちなんで、猫が主人公の2つの絵本を紹介したい。
今までにない視点から、戦争の愚かしさや悲劇がストレートに伝わってくると思うので。




  

左:『のら猫・ボス』 乾律子・作 田中優子・絵 (文芸の森社)
右:『ニャンコ、戦争へ』 菊池秀行・文 平松尚樹・絵 (小学館)




■去年NHKの朝のニュースを何気なく見ていたら、多くの飼い犬や猫が供出命令を受けて殺された事実を報道していて、大きなショックを受けた。動物園の象や猛獣が毒殺されたことは最近の教科書にも載っているが、普通のペットまでが殺されたとは最近まで知らなかった。

第二次世界大戦当時、6年生の少女だった乾さんは、この供出命令で愛猫のクロを失った。その悲しみや悔しさ、戦争への怒りが60年の歳月を経て、『のら猫・ボス』に結実した。
同じく供出問題を扱った『犬の消えた日』の著者である作家の井上こみちさんが、乾さんの思いを文章化した。

私はニュースを見終わってからすぐにNHKに問い合わせて、『のら猫・ボス』というタイトルと出版社を教えてもらった。少しでも多くの人にこの本と、人の命も動物の命も奪ってしまう戦争の愚かしさを知ってもらいたい。



    『のら猫・ボス』より

 ボスは、夢を見ていました。
 夢はよく見ますが、この夢だけは、なぜかくりかえし見るのです。
 それは日本が、多くの国を相手に戦争をしていたころのことです。
<国のために、飼い犬や猫を、供出するように>という命令が、家々にまわってきたのです。国の命令には、だれもがしたがわなければなりません。
「なぜ、犬や猫の命をさしださなければならないのか」
 ほんとうの理由は、わかりませんが、「人の食べものもすくないというのに、犬や猫を飼うのはぜいたくだ。犬や猫は毛皮や肉になって、戦地の兵隊さんのために役にたてるのだ」と、いわれていました。
 そして、たくさんの犬や猫の命がうばわれたのでした。
 ボスの夢にでてくるのは、ひとりの女の子と、その女の子がだきしめている猫です。
「クローっ、許して。わたし、おまえを助けられなくて、ごめんね。かならず仇をとるから。生まれかわっても、おまえのことはわすれないよーっ」
 猫をうばわれた女の子が、なきながら、さけんでいるのです。女の子が立っているところは、犬や猫のなきがらが、ころがっている雪の原です。
 犬や猫のおびただしい血で、雪はまっ赤にそまっています。
 夢からさめても、ボスの耳には、女の子のさけび声がのこっています。
 ボスは、なぜ、地獄絵のような夢を見るのか、わかりません。
 でも、クロというのが、その女の子の家の猫だということは、すぐにわかりました。
 女の子は、供出命令にしたがって、クロを麻ぶくろにいれて、指定の場所につれていったのです。
 クロは、まもなくじぶんが殺されることなど、知るはずもありません。麻ぶくろの中で眠っていました。クロは、麻ぶくろごと女の子からひきはがされると、まもなく、なぐり殺されたのでした。
「クローっ、許して。わたし、おまえを助けられなくて、ごめんね。かならず仇をとるから。生まれかわっても、おまえのことはわすれないよーっ」
 ボスは夢のなかで、その声をきくたびに、女の子にささやきかけます。
「仇うちは、順調かい?」
 女の子は、もくもくと、いくあてのない犬や猫のせわをつづけています。
 いつのころからか、ボスの夢にでてくる女の子の黒くつややかだった髪には、白いものが、まじりはじめていました。
 ボスには、女の子のすがたがどのように変わっても、すぐにわかるのでした。
 ボスは夢のなかで、
「クローっ、許して……」という女の子の声をきくたびに、
「仇うちは順調かい?」とささやきかけているのです。




■『ニャンコ、戦争へ』は、伝奇SFで有名な菊池秀行の作品である。


いつも世界は戦争中。あまりに多くの兵隊が死んだり怪我をするので、政府の頭のよい誰かが、人の代わりに猫を兵士として戦場に送ることを考えた―。

「ニャンコがはじめて戦争へ行ったのは、僕が三つのときだった。
 もちろん、僕は戦場も、ニャンコがそこへ行ったわけも知らなかった。半年ほどして、ニャンコは戻ってきた。」


ニャンコは何度も戦場に送られ、戻ってくるたびに目や足などを失っていた。
そして最後に戦場に向かったあと…。



静かな中に、やり場のない悲しみが胸を打つ。
ジョージ・オーウェルやP・K・ディックを髣髴させる、シニカルで優れた風刺作品だ。
ぜひ一読をお勧めしたい。




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