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激動する社会の波におぼれずに、自分の頭で考え 行動しようじゃないの。 命令されるのなんか 大嫌い。「群れない、媚びない、とんでもない」の猫の精神でがんばっていきまっしょい。
 はや霜月になりにけり
2005年11月05日 (土) | 編集 |

趣味のコーナー、ロビーを侵食す
年末に近づくと、いつも決まって、これまでの日々を無為に過ごしてきたのではといった虚無感に襲われる。日ごとに寒く暗くなっていく気候がそうした気分を加速させるのだろうが、もう半年近くも休暇らしい休暇を取れずにいるせいか、ことに精神的な疲労感が鉛のようにじっとりと重く、体の内側に張りついているような気分である。
旅館という仕事柄、四六時中他人と一緒に過ごし、さまざまな視線を浴び続けざるを得ないわけで、もともと孤独を好み、しかも鬱病から視線恐怖症になった過去を持つ私にとっては、より耐え難い日々の連続でもある。あたかも自分の内面を少しずつ侵食されていくような、静かな恐怖感に包まれた日常ともいえるだろう。
そうした中で、好きな過去の思い出が一服の安堵感をもたらしてくれる。日々他者の思念や視線による侵食に怯えつつ、その片方では自らの思い出の枝葉を徐々に広げてゆくのだ。
なんちって、私の好きな新選組関連コーナーを勝手に作って、増幅させているだけの話だが(^◇^)

おそるべし“おばちゃん”攻撃
人が集まればドラマが生まれる。ホテルや旅館を舞台にした映画やテレビも多い。私が経験した短い中でも数々のドラマがあった。
たとえば現在進行形で、6泊逗留している年老いた父娘の場合。予約は共同のトイレを使う小さな部屋だったが、それでは不便だろうとトイレ付に同じ値段で部屋割りした。何も言わないところを見ると、たぶん当初の予約内容を忘れてしまったのだろう。まあ、それはいい。きょうは何曜日なのかと聞きに来るくらいの人なのだから。
部屋に案内する途中、これ食べてと紙包みを渡された。ケーキかと思ってありがたく頂戴すると、ミニクロワッサンが3~40個入っていた。翌日客室掃除のパートさんたちにもおすそ分けしたが、まだ数個残っている。まあ、これもいい。先日14人で宴会・舟盛り・朝食を予約した中学の教師連中が前日取り消しの電話をかけてきて、「えっ、キャンセル料ってあるの?」とすっとぼけた悪質さに比べれば、なんとほほえましいことか。空いた客室は埋まらないわ、魚屋が仕入れた鯛などはうちで引き取るわ(もちろん実費!)で、パートナーのたくろー氏の腹は活火山のマグマのように煮えたぎった。そして大きな鯛の切り身はまたまたパートさんたちのお持ち帰りになったのだった。
さて年老いた父の方はほぼ終日部屋で横になり、これもかなり年配と思われる娘は持参した黄色いミニサイズのパジャマを着て(他にもたくさんお客がいるから遠慮してほしいのだが)、まさに「天然」と思われる不可思議な言動を繰り広げている。まずいきなり釜飯の宅配をお願いと頼まれた。そこでこの周辺には宅配する釜飯屋はない(メニューに釜飯を載せているお店はある)と説明し、うな重なら届けてもらえると代替案を出すと、「私はうな重はダメ」ときた。父親一人分の配達は無理なので、仕方なくわれわれ夫婦の分もプラスして注文した。「肝吸いはどうします?」と聞くと、「えっ、きなこ?」 ま、これもいい。うなぎを食べない人は肝吸いも知らないだろうし、昨日の夜中1時半過ぎに、内線で「これからマッサージさんを呼んでほしい」とのたまった非常識なカップルに比べればまだずっと我慢できるというものだ。
昼間は娘一人で、ちょくちょく外へ買い物に出かける。おとといは、帰ってきていきなりフロントにいる私に、「こけし!」と、土産物屋で買った陶器の舞妓さん人形を差し出した。どこがこけしじゃ! あげくに「お願い、これ飾って!」とくどいほど頼まれた。こういう人形は私の趣味の範疇外なのだが。想像の中でその人形を床に叩きつけながら、ステンドグラス製の飾りランプの前に置いた。娘はここを通るたびに、満足げに人形を覗き込んでいる。これもよしとしよう。同じわがままでも、平日のみのサービスの貸切風呂を、日曜なのにきょうは平日だと言い張った家族連れの母親(子供が聞いてるよ)や、夜中の1時頃にティッシュペーパーがなくなったから別館3階の部屋まで持って来いと言ってきた客。今遅い到着のお客のチェックイン中なので取りに来てくださいと返事をしたら、「ティッシュの残りが少なかったのはフロントの責任だ」と言い返してきた。部屋の準備のときにまだ半分あるのを確認済み。そんなことまで責任転嫁するな。第一フロントへのご用は23時までにと大きく書いてあるじゃないか。それも分別さかりの年齢の父親が。こうした自己チューの人たちに比べたら、実にかわいいものだ。
しかーし、この娘、ことあるごとに私を「おばちゃん」「おばちゃん」と呼ぶのだ。これはよくない。実に許しがたい暴挙である! 「どうみてもあんたの方が歳くってるだろう!」と、声を大にして叫びたい。仕事ではもちろん、友人同士だって互いに苗字で呼び合う大人の付き合いをしてきた身にとって、この地へ来てから「奥さん」と呼ばれることすら拒否反応を感じているのに、それを「おばちゃん」などとは! 呼ばれるたびに髪の毛は逆立ち、目は吊り上り、まるでギリシア神話の怪物ゴルゴン(メドゥサ)状態の私。脈は早まり、息は絶え絶え。免疫力が落ちて、急に風邪をひいてしまった。げに恐ろしき殺人兵器だ。なじみ客に電話で、「女将さん、疲れてるんじゃない? 声に元気がないよ」と言われてしまった。
だがうれしいことに、この娘とも明日でいよいよお別れだ。とはいえ、ちょっと淋しいような…。いやいやここは心を鬼にして、きっぱりとお別れしよう。そしてその後は、陶器の人形をそっと隅の方に置き直すことにしよう。



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